森鷗外「あふさきるさ」⑨ まへの夜

まへの夜 同志の友十人足らずの狩競せんとすと告げおこせし少年に ゆらぐなり 油火風に弦(つる)はぐ丸屋十張には 足らねど材の六つ選りし弓 狩くらの 荒雄の明日を神夢に泣き岫(くき)ぬちの 闇に木精(こだま)の夜ただこたふる ほらあな 「あふさきるさ…

かぐはしい南の風はかげろふと青い雲滃(おう)を載せてなだらのくさをすべって行けばかたくりの花もその葉の班も燃える 賢治のうた 冒頭にあげたのは、私が中学1年生になったばかりのときに手にした『賢治のうた』(草野心平編著)のトビラにある「北上山地…